京都の観光旅行ガイド
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鞍馬の火祭

くらまのひまつり

鞍馬の火祭は、京都三大奇祭の1つに数えられる由岐神社の例祭で、毎年10月22日に行われます。街道には篝火(かがりび)が焚かれ、男衆らが「サイレイヤ、サイリョウ」の掛け声とともに松明を担いで練り歩きます。

鞍馬寺の仁王門前に大小約100本もの松明が集まり、神輿渡御が行われます。神輿渡御の際には「チョッペンの儀」が行われ、独特な儀式が祭りの奇祭としての印象を強めています。その後、神輿は御旅所へと渡御されます。

火祭の起源は、940年(天慶3年)9月9日の夜に、御所内に祀られていた由岐大明神を遷座した際、葦の篝火を焚いて道を照らしたことに由来しています。当時、承平天慶の乱(じょうへいてんぎょうのらん)や都の大地震などで世の中が混乱していたため、平安を祈願して朱雀天皇の詔によって御所の北方に位置する鞍馬へと由岐大明神を遷しました。

当初は「鞍馬祭」とも呼ばれ、9月9日に行われていました。掛け声の「サイレイヤ、サイリョウ」は「祭礼や、祭礼」が転じたものとされています。

鞍馬の火祭は住民組織である七仲間(大惣仲間(おおぞうなかま)、名主仲間(みょしゅうなかま)、宿直仲間(しゅくじきなかま)、僧達仲間(そうだちなかま)、大工衆仲間(だいくしゅうなかま)、太夫仲間(たゆうなかま)、脇仲間(わきなかま))によって行われます。

「向こう鉢巻き」、腰に「締込み」、足に「脚絆」という装束を身にまとい、背中に「南天の小枝」をさしているのが特徴です。

鞍馬の火祭は、松明が目を引きますが、6本の剣鉾も登場します。蝶鉾(上大惣仲間)、菊鉾(中大惣仲間)、鳳鉾(下大惣仲間)、葵鉾(名主仲間)、寺鉾(僧達仲間)、桐鉾(大工衆仲間)という剣鉾が、それぞれの仲間によって持ち運ばれ、祭りを一層盛り上げます。

正式名称由岐神社例祭
日時10月22日 9:00本殿神事 18:00神事触れ
場所〒601-1111 京都府京都市左京区鞍馬本町1073
拝観無料
問い合わせ075-741-1670
地図

鞍馬の火祭の見どころ

鞍馬の火祭の見どころはたくさんありますが、特に21時頃から22時頃にかけて行われる、鞍馬寺仁王門前に松明が集められる場面や「チョッペンの儀」が印象的です。ただし、一般の観光客はこれを間近で見ることは難しくなっています。近年、鞍馬の火祭は観光客に対して厳しい規制が敷かれており、規制線のロープ内から出ることができず、また立ち止まることも許されず、一方向に進み続けるしかできないためです。

どうしても見たい場合は、雍州路(ようしゅうじ)などの近隣店舗に予約をし、当日タスキを借りて見学する方法があります。ただし、予約は1年前から埋まっていくため、早めの手配をおすすめします。

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神事触れ
じんじぶれ

18時になると、「神事にまいらっしゃーれ」との掛け声を上げながら鞍馬街道を歩きます。その合図で松明に火が灯され、篝火も焚かれます。神事触れは2人で行い、1人は鞍馬寺仁王門前に置かれた神輿の前から、もう1人は鞍馬寺から南へ約400mに位置する下大惣仲間から出発します。神輿前から出発した者は、鞍馬寺から北へ約500m先の上大惣仲間のところまで向かい、下大惣仲間から出発した者は神輿前まで進みます。

祝詞奏上
のりとそうじょう

鞍馬寺の仁王門前石段上に安置された八所大明神神輿、由岐大明神神輿の前で祝詞を奏上します。

小松明
しょうたいまつ

19時頃から、幼児や小学生が小さな松明(トックリ)を担いで、大人に付き添われながら練り歩きます。

大松明
おおたいまつ

重さは約100キロ、直径1メートル、長さ5メートルにも及ぶ巨大な松明で、男衆が2、3人で担いで練り歩きます。

御旅所
おたびしょ

20時頃、お旅所に剣鉾や太鼓に鉦松明、大松明が立てられ、注連縄切りが行われます。注連縄は鳥居前と舞殿の二か所に張られています。

鞍馬寺仁王門前
くらまでらにおうもんまえ

21時頃までに鞍馬寺の仁王門前に大小約100本の松明が集まり、すべての松明が揃うと、注連縄切りが始まります。

注連縄切りの儀
しめなわきりのぎ

22時頃、太鼓の合図とともに「おおー」という警蹕(けいひつ)が上がり、青葉の精進竹に張られた注連縄が切られます。その後、神幸の儀が行われ、祝詞奏上などの神事が終わると、2基の神輿渡御が始まります。神輿は八所大明神、由岐大明神の順で参道の石段を降りて進みます。

チョッペンの儀
ちょっぺんのぎ

神輿渡御の際、神輿が鞍馬寺仁王門前の参道の石段を降りるときに「チョッペンの儀」が行われます。神輿の担い棒にぶら下がった2人の若者の足を周囲の者が持ち上げ、大の字に押し広げます。

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神輿渡御
みこしとぎょ

神輿はまず上大葱仲間の会所へ向かい、次に下大葱仲間の会所を訪れます。そうして、7つの仲間すべての会所前を巡り、最終的に御旅所へ向かいます。23時頃には御旅所に到着します。

三顧の礼
さんこのれい

2基の神輿が安置されると、「三顧の礼」が行われます。「祝おて三顧で、サイレヤ、サイリョウ」という音頭を3回繰り返します。その後、音頭の合図に合わせて、神輿の前から一気に駆け下ります。

神楽奉納
かぐらほうのう

神楽松明が境内を巡り、神楽が奉納されます。

チョッペン酒
ちょっぺんざけ

23日1時頃になると、祭りは終了し、関係者には「チョッペン酒」やスルメが振る舞われます。

鞍馬の火祭の歴史年表

940年
(天慶3年)
9月9日の夜、御所内に祀られていた由岐大明神を遷座する際、葦の篝火を焚いて、道々を照らしたことに始まる。9月8日と9日の2日間行われる。
1874年
(明治7年)
10月22日と23日に行われるようになる。
1963年
(昭和38年)
10月22日のみ行うようになった。

参考

由岐神社公式ウェブサイト、秋の奇祭、第13号 週刊京都を歩く、鞍馬の火祭り―神輿と剣鉾と炎の祭礼(佛教大学宗教文化ミュージアム)、鞍馬の火祭ガイドブック(監修 鞍馬の火祭保存会)