10月7日、京都文化博物館で開催中の特別展「世界遺産 縄文」を見に行ってきました。2021年に「北海道・北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産に登録されたのは記憶に新しいところ。今回はその地域を中心に出土した資料や遺物が紹介されていると聞き、ワクワクしながら出かけました。

縄文時代といえば、紀元前1万6000年頃から紀元前300年頃まで、なんと約1万年も続いた長い時代です。教科書的なおさらいすると、縄文人たちは狩猟や漁撈、採集を中心に生活し、石で作った道具(石斧・石刃・石皿など)を使っていました。貝塚からは食べていた貝や魚、鹿、猪などの骨が見つかっており、縄目模様のついた縄文土器を使って食べ物の煮炊きや貯蔵をしていたこともわかっています。また、栗やトチの実などをすりつぶして焼いた“縄文クッキー”のようなものを食べていたとも言われています。さらに、丸太をくり抜いた丸木舟で他の地域と交易も行っており、産地の異なる石が各地で見つかることからその広がりがうかがえます。

彼らの信仰には、あらゆるものに霊が宿ると考える「アニミズム(精霊信仰)」がありました。その象徴ともいえるのが「土偶」です。多くは女性をかたどったもので、乳房や膨らんだお腹を表し、安産や子孫繁栄を祈る意味があったと考えられています。

そんな予備知識をもって出かけた今回の特別展でしたが、実際に目にすると、教科書で見た世界が一気に現実味を帯びて迫ってきました。釣り針や銛、お皿など、彼らが実際に使っていたであろう道具を前にすると、「ああ、本当に“人”だったんだな」と感じます。1万年以上前にも、私たちと同じように日々を生きた人々がいたのだと思うと、なんとも言えない感動がありました。

土器の模様にはデザイン性があり、まるでアート作品のよう。もしかすると、模様をつける専門の職人がいて、「あの人のデザインがいいから頼もう」なんて会話があったのかもしれません。また、縄文人たちは入れ墨や化粧をしていたり、櫛や腕輪、イヤリングなどでおしゃれを楽しんでいたともいわれています。

そして今回、一番の目的は国宝「縄文の女神」。高さ45センチと土偶の中では最大級で、突き出たお尻と空を見上げるようなポーズが印象的でした。テレビで見たものが目の前にあるというだけで、思わず息をのむほどの感動がありましたね。このほかにも、ゴーグルをかけたような顔立ちの「遮光器土偶」など、個性的でかわいい土偶がたくさん展示されていました。土偶は破損した状態で出土することが多く、展示されていたものも左足が欠けていました。

展示スペース自体は1時間もあれば見終わる広さですが、夢中になってしまい、気づけば2時間も経っていました。それほど見ごたえのある特別展でした。特別展「世界遺産 縄文」は、京都文化博物館で11月30日まで開催中です。縄文人の息づかいを間近に感じられる、貴重な展覧会です。ぜひ足を運んでみてください。